小説・漫画で二重の意味を使う
物語には、短い文章には無い条件があります。
読者の知識が、読み進めるうちに増えていくことです。
同じ一文でも、第1章で読むときと最終章で読むときでは、読者が違います。 この差を使えるのは物語だけです。
物語だけが使える型:後から意味が変わる
コピー・記事 … 読者の知識は最初から最後まで同じ
物語 … 途中で増える。だから同じ文の意味が変わる
これは伏線と同じ構造をしています。 違いは、伏線が「後で回収される情報」なのに対し、 ダブルミーニングは「最初から二つ目の意味が存在していた」ことです。
伏線 … 読者は最初、その意味を知らない(情報が足りない)
ダブルミーニング … 読者は最初から読める(でも別の意味に読んでいる)
後者のほうが、読み返したときの衝撃が大きくなります。 「見えていたのに気づかなかった」という形になるからです。
3つの仕込み場所
1. セリフ
話者の意図と、読者の解釈がずれる形です。
(自作例)
「もう大丈夫だよ」
1回目 … 相手を安心させている
最終章後 … 諦めていた(大丈夫=もう何も期待していない)
セリフは話者の内面を書かないので、二重にしやすいものです。 地の文で説明しないぶん、読者の解釈に幅が残ります。
2. 章題・タイトル
読み終えてから戻ったときに、意味が変わります。 タイトルの型で扱ったものと同じです。
3. 描写の一語
いちばん難しく、いちばん効く場所です。
(自作例)
「窓の外は、まだ明るかった」
1回目 … 時刻の描写
後から … その人物にまだ時間が残っていた/希望があった
描写の中に混ぜると、読者は仕掛けを警戒しません。 セリフや章題は「意味ありげ」に見えますが、描写は流して読まれるからです。
漫画で追加される条件
**絵があることです。**これが2つのことを起こします。
① 絵が意味を確定させてしまう
→ セリフが二重でも、表情が片方に確定させると掛けが消える
→ あえて表情を描かないコマを使う
② 絵とセリフで別の意味を持たせられる
→ 文章には無い手法。セリフは表の意味、絵は裏の意味を語る
②が漫画固有の強みです。 言葉だけでは作れない二重が作れます。
連載の場合の注意
読者は前回を細かく覚えていない
→ 仕込みから回収まで間が空くと、気づかれない
→ 回収する回で、仕込んだ場面を少し思い出させる
感想や考察が先に出る
→ 読者が公開の場で答えを言ってしまう
→ これは止められない。前提として受け入れる
やってはいけないこと
✕ あとがき・インタビューで「二つの意味を込めた」と明かす
→ 読み返しの発見を奪う(→ コツ)
✕ 傍点やモノローグで気づかせようとする
→ 二重ではなく説明になる
✕ 二つ目の意味が無いのに、意味ありげな書き方をする
→ 読者が探して見つからないと、信頼を失う。これがいちばん損失が大きい
最後のものが、実害として最も大きくなります。 仕掛けがあると思わせて何も無いと、読者は次から探さなくなります。
まとめ
- 物語だけが使える条件=読者の知識が途中で増える
- 伏線との違い:ダブルミーニングは最初から読めていたのに別の意味に読んでいた
- 仕込み場所は3つ。セリフ/章題・タイトル/描写の一語
- **描写に混ぜるのがいちばん効く。**読者が警戒しないため
- 漫画は絵とセリフで別の意味を持たせられる。文章には無い手法
- 連載では、回収する回で仕込んだ場面を思い出させる
- 意味ありげに書いて中身が無いのがいちばん損失が大きい