ロゴ・デザインで意味を重ねる
ロゴにも「二つの意味が同時に見える」ものがあります。
言葉の掛けと構造は同じですが、扱うのが音ではなく形になります。 その差が、できることとできないことを決めていきます。
言葉との3つの違い
① 同時に見える
言葉 … 一つ目を読んでから、二つ目に気づく(時間差がある)
形 … 両方が同時に視野に入る。切り替えが一瞬で起きる
② 気づく人の割合が高い
言葉 … 文脈と語彙が要る
形 … 見えるか見えないかだけ。前提知識が要らない
③ 説明できない
言葉 … 「AとBを掛けています」と言葉で説明できる
形 … 説明すると、見えなかった人にも見えてしまう
(言葉と同じく、説明した時点で発見が消える)
**②が最大の違いです。**形の二重は、言葉より圧倒的に届きやすいものです。
手口1:余白を読ませる(negative space)
図形の「描いていない部分」が、もう一つの形になっています。
・文字と文字のあいだの空きが、別の形に見える
・囲みの内側の白い部分が、意味を持つ形になっている
最もよく使われ、最も評価される手口です。 理由は、描かれていないものが見えるという驚きが大きいからです。
難しい点: 余白の形は、周囲の形が決まってから初めて確定します。 **先に余白を設計できません。**両方を同時に動かしながら詰めることになります。
手口2:字形そのものを図にする
文字の一部を、意味のある形に置き換えます。
・「i」の点を、その事業に関わる形にする
・文字の一部を欠けさせて、別のものに見せる
・2文字を重ねて、第3の形を作る
読めなくなったら失敗という制約がつきまといます。
◎ 一目で読めて、そのうえで形が見える
✕ 形を優先して、読みにくくなった
ネーミングで「読めることが第一の仕事」と書いたのと、同じ構造です。
手口3:記号の多義性を使う
もともと複数の意味を持つ記号を使います。
矢印 … 方向/成長/指示
円 … 完結/輪/地球/循環
線 … 境界/繋がり/道
三角 … 山/警告/再生(メディアの再生ボタン)
この手口は陳腐化が速いのが難点です。 誰でも思いつくため、同じ発想のロゴが大量に存在します。
使うなら、記号そのものではなく組み合わせで差をつけることになります。
形の二重で守るべきこと
1. 小さくしても成立するか
ロゴは favicon サイズ(16px 相当)まで縮む。
余白の形も字形の仕掛けも、そこで消える
→ 縮小した状態で、一つ目の意味だけでも成立しているか
2. 単色でも成立するか
色を使って二つ目の意味を作ると、白黒印刷・刻印で消える
→ 形だけで成立させる
3. 意図しない形が見えないか
言葉の型3(分割)と同じ事故が、形でも起きる
→ 別の文化圏で別の意味を持つ図形になっていないか
→ 他人に「何に見えますか」とだけ聞く
3番目の確認方法は、ネーミングとまったく同じです。 言葉でも形でも、作った本人には意図しない意味が見えません。
言葉のロゴと組み合わせる
名前と形の両方に二重を仕込むと、たいてい失敗します。
✕ 名前がダブルミーニング + ロゴも二重
→ 情報が多すぎる。どちらも気づかれない
◎ どちらか一方に絞る
コツの「1つに1箇所」は、ここでも同じです。
まとめ
- 形の二重は、言葉と構造は同じ。扱うのが音ではなく形
- 気づく人の割合が言葉より圧倒的に高い。前提知識が要らないため
- 手口は3つ。余白/字形/記号の多義性
- **余白(negative space)が最も評価される。**描かれていないものが見える驚き
- 記号の多義性は陳腐化が速い。組み合わせで差をつける
- 守るべきは3つ。小さくしても成立/単色でも成立/意図しない形が出ていない
- **名前と形の両方に仕込まない。**どちらも気づかれなくなる