ダブルミーニングと皮肉・当てこすりの違い
どちらも言葉の表面と違うものが後ろにあります。 そこだけ見ると似ていますが、両者は逆の動きをしています。
分かれ目は「表の意味が生きているか」
ダブルミーニング … 二つの意味が【両立】する。どちらも本当
皮肉 … 表の意味を【打ち消す】。表は本当ではない
具体的に見てみます。
| 表の意味 | 裏の意味 | 表は本当か | |
|---|---|---|---|
| ダブルミーニング | 成立している | 成立している | 本当 |
| 皮肉 | 褒めている | けなしている | 嘘 |
皮肉は、表の意味を信じさせないことで成立します。 「よくやったね」と言いながら、まったくそう思っていないと伝えるわけです。
ダブルミーニングは、表の意味も本当です。 両方が同時に成り立っているから、片方を消すと文が壊れます。
「当てこすり」はさらに別
当てこすりは、対象を名指ししないまま特定の相手に向ける言い方をいいます。
ダブルミーニング … 意味が二つ
皮肉 … 意味は一つ(裏)。表は打ち消される
当てこすり … 意味は一つ。向ける相手が隠されている
当てこすりで隠されているのは意味ではなく、宛先のほうです。 だから技法としては別系統になります。
見分ける質問
迷ったときは、これで足ります。
表の意味を、書き手は本当だと思っているか。
思っている → ダブルミーニング
思っていない → 皮肉
混ざることはある
実際の文章では、両方を同時に使うことがあります。
(自作例・遅刻の多い相手への一言として)
「時間の使い方が、いつも独特ですね」
表 … 事実の指摘として読める(独特な段取りをしている)
裏 … 遅刻への非難
→ 表が「本当」でもあるので、ダブルミーニング的に見える
しかし書き手が伝えたいのは裏だけ = 実質は皮肉
重心がどちらにあるかで判定します。 表と裏の両方を伝えたいならダブルミーニング、 裏だけを伝えたいなら皮肉です。
実務での注意
皮肉は、書き手が思うより強く届きます。
・受け取った側は、裏の意味だけを受け取る
・「そういう意味ではない」と後から言っても、表の意味は信じてもらえない
(表を打ち消すのが皮肉の仕組みなので、当然そうなる)
仕事の文章では、皮肉を使う理由がほとんどありません。 言いたいことがあるなら直接書いたほうが、誤解も遺恨も少なくて済みます。
一方でダブルミーニングは、表の意味が本当である限り、 誤解されても表の側で受け取られるだけで済みます。 この安全性が、両者の実務上の差になります。
まとめ
- 分かれ目は表の意味が本当かどうか
- ダブルミーニングは両立、皮肉は打ち消し
- 当てこすりは意味ではなく宛先が隠れている。別系統
- 判定は「表の意味を書き手は本当だと思っているか」で足りる
- 皮肉は書き手が思うより強く届く。仕事の文章では使う理由がほとんど無い
- ダブルミーニングは表が本当なので、誤解されても表の側で受け取られる