ダブルミーニングが誤解を生むとき
狙って掛けたものより、狙わずに二重になったもののほうが問題を起こします。
書き手は一つの意味で書いています。 読み手は別の意味で受け取ります。しかも読み手は、自分の読みが正しいと思っています。
この事故がどう起きるかを見ていきます。
事故は「気づかれない」から起きる
狙って掛けたものは、書き手が二つの読みを把握しています。 問題は、書き手が一つしか見えていない場合です。
狙った掛け … 書き手は2つ見えている → 危ないほうを潰せる
狙わない二重 … 書き手は1つしか見えていない → 潰しようがない
だから「気をつける」では防げません。 見えていないものには気をつけられないからです。手順で見つけるしかありません。
よく起きる4つのパターン
1. 語そのものが二義的
「気が置けない」 … 親しい/油断ならない(正反対)
「役不足」 … 役目が軽すぎる/力が足りない(正反対)
「情けは人のためならず」 … 巡り巡って自分に返る/甘やかすのは本人のため
正反対に読める語は、それだけで危険な語です。 使わないのが最も確実な対処になります。
2. 修飾がどこに掛かるか決まらない
「新しい商品の説明書」
→ 新しい【商品】の説明書/【新しい説明書】
「彼女は笑いながら走る彼を見送った」
→ 笑っているのは彼女/笑っているのは彼
日本語は修飾語が前に付くので、係り先が複数になりやすいのです。 読点の位置か、語順の入れ替えで直ります。
3. 否定の範囲が決まらない
「全員が来なかった」
→ 誰も来なかった/全員は来なかった(一部は来た)
「全員/みんな/すべて」+否定は、ほぼ必ず二通りに読めます。 言い換えるのが早い解決です(「誰も来なかった」「一部しか来なかった」)。
4. 数量・期間の起点が不明
「3日以内にご連絡ください」
→ 起点はいつか(発送日/到着日/今日)
「2人に1つ配布」
→ 2人ごとに1つ/2人それぞれに1つ
これがいちばん実害の出るパターンです。 条件・期間・数量は、二通りに読めた時点で問い合わせが発生します。
公開前に見つける手順
書き手には見えないので、機械的に潰します。
① 正反対に読める語を検索する
気が置けない/役不足/情けは人のためならず/確信犯/敷居が高い 等
② 「全員」「みんな」「すべて」+否定 を検索する
→ 見つけたら全部言い換える
③ 条件・期間・数量の起点を確認する
→ 「いつから」「何を基準に」が書いてあるか
④ 修飾語が2語以上続く箇所を読み直す
→ 係り先が一つに決まるか
⑤ 文脈を知らない人に読ませて、「どういう意味だと思った?」と聞く
→ ①〜④で見つからないものは、これでしか見つからない
①〜④は自分でできます。⑤だけは他人が要ります。 そして⑤でしか見つからない事故が、いちばん実害が大きいのです。
起きてしまったときの対処
✕ 「そういう意味ではありません」と説明する
→ 読み手はすでに別の意味で受け取っている。説明は打ち消しにならない
◎ 文そのものを、二通りに読めない形に直す
→ 直したうえで、直したことを伝える
意図の説明ではなく、文の修正で対処してください。 意図は検証できませんが、文は誰でも確認できます。
狙った掛けとの線引き
このサイトは狙ってダブルミーニングを使うことを扱っています。 それと、この記事で扱った事故は、同じ現象の裏表です。
◎ 狙った掛け … 二つの読みが両方とも本当。どちらで受け取られても困らない
✕ 事故 … 一方の読みが【意図と違う】。受け取られると困る
判定は「両方の読みで困らないか」で足ります。 困る読みがあるなら、それは掛けではなく事故です。
まとめ
- 狙わずに二重になったもののほうが問題を起こす
- 書き手には見えないので、「気をつける」では防げない。手順で潰す
- パターンは4つ。二義的な語/修飾の係り先/否定の範囲/数量と期間の起点
- とくに**「全員+否定」と「条件・期間の起点」**は実害が出やすい
- 対処は意図の説明ではなく文の修正。説明は打ち消しにならない
- 判定は「両方の読みで困らないか」。困る読みがあるなら事故