英語のダブルミーニング(pun/double entendre)
英語圏にも、二重の意味を使う技法はあります。
ただし分類の切り方が日本語と違います。 「ダブルミーニング」に相当する一語が無く、性質ごとに別の名前が付いています。
3つの語の守備範囲
| 語 | 何を指すか | 含み |
|---|---|---|
| pun | 音の一致を使った言葉遊び全般 | 笑いを含む。日本語の「ダジャレ」に近い |
| double entendre | 二つの意味を持つ表現。二つ目がきわどい場合に使うことが多い | 性的・下品な含みが出やすい |
| innuendo | ほのめかし。直接言わずに示唆する | 否定的な文脈が多い |
日本語の「ダブルミーニング」は、この3つのどれとも完全には一致しません。
日本語の「ダブルミーニング」= 技法の名前。中立
英語の pun = 笑いを狙ったもの
英語の double entendre = きわどい二つ目を持つもの
中立に「二つの意味がある」と言いたいなら、一語で置き換えないほうがよいでしょう (→ 英語として通じるのか)。
英語のほうが pun を作りやすい理由
同音異義語が日本語より多いからです。
英語の同音異義(homophone)の例
right / write / rite … 3語が同じ音
there / their / they're
sea / see
knight / night
flour / flower
英語は綴りと発音がずれているぶん、同じ音を持つ別語が生まれやすいのです。 日本語の同音異義は漢字で区別されますが、英語は綴りごと別になります。
さらに、一語が複数の意味を持つ場合(polysemy)も多くあります。
light … 光/軽い
run … 走る/経営する/流れる
fine … 素晴らしい/罰金
lie … 嘘をつく/横たわる
「light(光/軽い)」のように、物理と抽象が1語に入っているのは、 日本語の型2(多義)とまったく同じ構造です。
翻訳すると消える
これが実務でいちばん効いてくるところです。
pun は音に依存している → 翻訳すると音が変わる → 掛けが消える
対処は3つしかありません。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 諦める | 一方の意味だけ訳す。最も多い |
| 作り直す | 訳語のほうで別の掛けを作る。内容は変わる |
| 注を付ける | 「原文では〜と掛かっている」と説明する。発見は消える |
「作り直す」が翻訳者の腕の見せどころとされますが、 原文と違うものになるという事実は変わりません。
日本語との構造の違い
| 日本語 | 英語 | |
|---|---|---|
| 同音の作られ方 | 漢字で区別される(表記が違う) | 綴りごと別語(表記も違うことが多い) |
| 表記で掛ける | ◎ できる(漢字の当て分け) | △ しにくい |
| 音だけで掛ける | ◎ できる | ◎ できる |
| 分割で掛ける | ◎ 分かち書きが無いので作りやすい | ✕ 単語の間に空白があるので分割できない |
型3(分割)が英語でほぼ使えないのが、最も大きな構造差です。 日本語は分かち書きをしないので、切る位置を変えられます。
英語圏で pun が置かれる場所
・見出し(新聞・雑誌の見出しは pun が非常に多い)
・商品名・店名
・冗談・会話
見出しでの多用は、日本語との違いです。 英語圏の新聞見出しは pun が「うまい」とされる文化があり、 日本語の見出しより明確に言葉遊びが許容されています。
まとめ
- 英語には一語で対応する語が無い。pun/double entendre/innuendo に分かれる
- pun は笑いを含む(ダジャレに近い)、double entendre はきわどい含みが出やすい
- 英語は同音異義語が多い(綴りと発音がずれているため)
- **light(光/軽い)**のように、物理と抽象が1語に入る構造は日本語と同じ
- **翻訳すると消える。**諦める/作り直す/注を付ける の3つしかない
- **型3(分割)は英語で使えない。**単語間に空白があるため
- 英語圏では新聞の見出しに pun が非常に多い